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「夢の教室」開催紹介

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座談会 ~これまでを振り返って、そして今後に向けて

[ 07.11.26 ]


2007年11月26日 JFAハウスにて
JFA news 2007年12月号掲載

2007年4月からスタートしたJFAこころのプロジェクトは、2007年12月15日までに100を超す授業が開催された。
そこで、手嶋秀人JFAこころのプロジェクト推進室長は、夢先生として活躍する宮澤ミシェル氏、野田朱美さんをゲストに迎え、これまでの「夢の教室」を振り返るとともに、今後の展望について意見を交えた。

自分の経験を自分の言葉で

手嶋秀人推進室長(以下、手嶋):この4月にスタートし、今年度は50回程度を目標値に置いていました。しかし、内外の関心が高かったこともあり、来年3月までには150回達成できる見込みです。この数字を見ても非常に満足していますし、何より授業の内容が素晴らしい。現在までで110回程になるのですが、普通それだけやれば、ちょっと失敗かなと思える授業もあるはずなんです。しかし、それがない。これは自慢でも誇張でもなく、本当に「夢の教室」に失敗はないと思いますね。このクオリティーが維持されている理由は二つあって、一つはOB、OG、現役に関係なく、自ら立候補した人が授業を行っているという点。要するに熱い志を持ってやっているということですね。もう一つは、「JFAメソッド」という骨組みがしっかりあって、そこに夢先生自らの実体験を乗せて話している点です。人が作ったものでなく、自分の経験を自分の言葉で話すというところですね。そういうしっかりしたものがあるから失敗なく実施できている。200回、300回行っても大丈夫だと思っています。

 

── 夢先生のオファーを受けたとき、また、授業を行ってみての感想をお聞かせください。

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宮澤ミシェル氏(以下、宮澤):まず、どういうものなのかな、というのは思いました。そして、実際に確認してみて、ああ、そうなんだ、面白いジャンルに来たなと。(自分でも、この夢の教室に)近いことはやってきましたが、何かをずっと感じていて、それが僕の中でつながりました。授業は非常にフレッシュで、そういう授業を子どもたちの前でできるということ、サッカー選手でよかったな、こういう機会を与えられてよかったなということを感じました。ただ、実際に話をしてみて、子どもたちから手紙ももらいますが、果たしてどのくらいの影響力があるのか、どのくらい内容が残っているのかというのは、信じているけどわからない部分でもあります。

野田朱美さん(以下、野田):私は、小さい子どもを対象にサッカーを教えたり、講演会をしているので、話を聞いたときはすぐに「すごく興味がある」と伝えました。実際に話を聞き、本当にしっかりとした中身だなと感じたので、何の躊躇もなく引き受けました。ゲームの時間でサッカーをやらないというのも良いアイデアですし、授業では思っていた以上に子どもたちが真剣に聞いて、きちんと反応してくれました。その姿勢にこちらも熱くなりましたね。

 

── ご自身の失敗や挫折を話すことに抵抗はないですか。

宮澤:ないですね。むしろ、その挫折があってよかったという話になります。あれがあったからここにたどり着いた。そういう話をすることで、間違いなく何かが伝わったという実感が得られます。夢があれば挫折があっても達成できなくても自分が成長していくものなんだ、人間ってそういうものなんだとわかってくれればいいんです。僕はプロになったという話は最初の一言しか言いません。

野田:私も抵抗はないです。子どもたちは、そのときは「ふーん」という感じだったりもしますが、返ってきたひとことシートを見ると、それぞれ印象に残ったところが書いてある。それが本心なんだろうなと思います。一番うれしいのは、「夢を持つのもいいかなと思った」と書いてくれた子がいることです。一生懸命話をした甲斐があったなと実感しました。

 

顔を見れば伝わっていることがわかる

── 授業中の発言や子どもたちから返ってきたひとことシート、アンケートで印象的だったものはありますか
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野田:いとこのおじさんが事故で半身不随になってしまって、その方が九州にいらっしゃる。「僕は大人になって看病に行ってあげたい」、それが夢だと。ジーンときました。

宮澤:僕は最初の授業ですね。夢は薬剤師だというので、どうしてだって聞いたら、お母さんが病気で治らない、と。ほかの子もすばらしい夢をたくさん書いていましたね。

手嶋:アンケートはすべての授業で取っています。私はこれにあまりとらわれる必要はないと思っています。授業終了後の子どもたちや担任の先生の顔を見れば、この授業で伝わっているというのがわかりますよ。

 

── 授業の中で感じたことや改善点があれば教えてください。

 宮澤:非常によくできていると思います。時間もコンパクトで。トークのほうは、最初に頂いた資料を見たとき、「この時間でこれだけのメッセージを入れるの!?」と思いましたけど、その後、もう一度協会でお話をさせてもらったら「一切任せるからその時間を自由にやってくれ、ただこういうのをわれわれは伝えたいだけだ」と言ってくださったので、それで非常に楽になって自分を出すことができました。話の中身を考えるときには、自分自身もいろいろあったことを再確認させられるし、それを伝えるときには間違いなく響きますね。自分の子どもともっと話をしなくてはいけないと思いました。

手嶋:授業は1回。われわれはその1回限りということでスタートをしました。しかし、「継続的な授業」を提案した人もいます。例えば5年生を教えたら、「1年後に来るから、どこまで君らが考え、成長し、努力したか発表してくれよ」と宿題を残してくる。そして、彼らが6年生になったときに、またそのクラスに行って授業をしてはどうでしょうか、と。いかがでしょうか。

宮澤:僕も継続が大事だと思いました。1回目は印象であったり、刺激であって。2回目になると、サッカースクールもそうなのですが、全然違いますからね。

野田:教えた子どもたちの卒業式に出席するのもいいなと思います。違う先生が来るのもいいですね。こういう人もいるっていうのがわかりますし。

手嶋:このプロジェクト時点であった小学5、6年生のイメージと実際の子どもたちは違いましたね。きちんと人の話を集中して聞きますよね。

宮澤:確かに想像していたよりすばらしい。子どもらしさを十分に感じることができましたし、話をして、ああ、よかったというのはあります。

手嶋:話を聞かなかったり、反発したり、しらけた子どももいるかと思ったら、意外としっかりしているなと思いました。また話は戻りますが、それはやはりこのプロジェクトがいいからだと思います。ある日突然、見知らぬ先生が来て適当に話をしても聞かないでしょう。今の子どもたちは良し悪しとか本質を判別する能力がちゃんとありますからね。

野田:そう、そう。そういう能力は高いかもしれませんね。

手嶋:やはり自分に向かって来てくれる人は、子どもたちもわかりますから。

 

必要とされる喜びがある

手嶋:大きい視点から見て、このプロジェクトはいかがでしょうか。

宮澤:すばらしいと思います。サッカーという括りではなく、スポーツという括りで考えているわけですから。勝たなくてはいけないスポーツから、そうではなくスポーツを愛してくれる人たちの、一番底辺の子どもたちに対して何かをしたいというビジョンは、とても感銘を受けました。多くの人に影響を与えられるという点では、今はサッカーしかないのかもしれません。Jリーグ百年構想もそう、とにかくパイオニア的で、サッカーが今動いてくれていることが非常にうれしい。その中でこういうジャンルができたというのは、大きなことだと思います。サッカーをやってきた人間としてもすごくうれしいですね。

手嶋:ほかの競技出身者も手を挙げてきてくれました。今、ほとんどの競技が手を上げています。こう言っては失礼ですが、ほかの競技がやってないということなんですよね。

img_zdnk_photo12.jpg野田:女子のサッカー選手は全員が賛同すると思います。必要とされることの喜びというのか、こんな自分でも、こんなことができるんだという、その喜びがあります。

手嶋:本当にそう。なでしこリーグの選手を対象にした説明会でも数人の選手がこのプロジェクトの主旨を聞いて泣き出してしまったり・・・。

野田:それはわかる気がします。OB、OGにしても現役にしても、自分が必要とされることによって自覚みたいなものが出てきます。

宮澤:ユメセンサミット(2007年8月9日実施/夢先生同士による報告、討論会)のときもみんなそうでしたよね。「こういう場を与えてくれてありがとう」と。

手嶋:先ほど述べたように、ハートの熱い人や自ら手を挙げた人など、夢先生の選考基準はものすごくシンプルです。男性も女性も、有名も無名も関係ない、代表経験も関係ない、講師料も全員一律。要するに子どもたちを教えようとする熱い気持ちがあるかどうか、それだけなんです。

宮澤:特にOB、OGにとってすごくいいこと。まず、サッカー協会から何か依頼されるということ、そして自分がサッカー界の一員だったということ、引退した後も何かつながっているということ。それがすごくありがたいですね。

手嶋:OB、OGで特に代表経験がある有名選手は、それなりにモチベーションとプライドを持って後々生活できると思いますが、99パーセントがそうではないわけですよね。自分から「Jリーガーでした」と言わない限り、誰も気づいてくれない。別にそれに気づいてほしいわけではないかもしれませんが、夢先生をやることによってJリーガーのときの自信や誇りを持ち続けられたり、失いかけていたものを取り戻せたらいいなと思います。

  

一人でも多くの子どもに伝えたい

── 今後の展開についてお聞かせください。

手嶋:今年は首都圏を中心に行って、来年からはJリーグやなでしこリーグのホームタウンを中心に展開しようと思っています。それと他競技の選手の参加。一年でやることを一学期で終えたということもあり、二学期から徐々に拡大させています。他競技は先ほど述べたように、ほとんどの競技から賛同が得られましたし、新たに手を挙げたJクラブ、現役選手もいますので、ますます広がっていきます。

── 今後の展開についてお二人の考えを聞かせてください。

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野田:6年生ぐらいになると、中にはJリーガーやFIFAワールドカップ、オリンピックなんかは「そんなのさあ」とか「一握りでしょ」と冷めた目で見る子もいますよね。その通りだなと思うこともありますが、JFL(日本フットボールリーグ)の選手など、Jリーガーにはなれなかったけどこうしてがんばっているという話もまた別の意味で夢や希望を与えられると思います。

宮澤:その通りです。

野田:今は女子にもワールドカップがありますが、私は「でも、このときはなくてね」から始めます。そうすると、「ああ、そういうのもいいな」とか、別な視点で見てくれます。夢先生の側にしたらすごくうれしい。そうやって話ができたり、聞いてくれる人がいるというのは、本当に手放しにうれしいと思います。

宮澤:この前、サッカースクールに一人だけJリーガーではないリフティングのパフォーマーを連れて行ったんですよ。そうしたら、あいさつのときに「俺はJリーガーになれなかった」と。感動しましたね。今、野田さんが言ったように、プロになれなくても、今は違う道でがんばっているよと言えればそれでいいんです。

野田:その人がどれだけちゃんとやっているかは教壇に立てば伝わりますよね。5、6年生って思春期だから、子どもにとってはあこがれになります。ですから、学校の先生もそういう存在になる努力をきちんとしなくてはいけない。同様に私もそうならなくてはいけないと思います。

宮澤:今、驚くことに、学校の先生が夢という子どもはあまりいませんからね。

野田:それはすごく感じます。思春期の子どもを対象にしているからなおさらあこがれの存在でいなくてはいけない。だからこんなふうにパリッと来られて、私はこうやっているんだと言われると、やはり強烈なあこがれを抱くと思います。そこにJリーガーとか何とかは関係ないはずです。

宮澤:他競技の選手の参加については当初、少し抵抗がありました。芸能人や他競技の有名選手が授業をすることでこのプロジェクトをメジャーにしようとしているのではないかと。それは心配でしたよ。でも、手嶋さんがおっしゃったように、きちんと説明をして、主旨をご理解いただいて、子どもたちのためにいいものができればいいと思います。ただし、夢先生をやりたいというJリーガーもまだまだたくさんいます。

野田:私もミシェルさん同様、うーん、というところもありました。でも、自分から手を挙げるということが一番大事なのかなと思います。それに、私が授業をしたときは、Jリーガーになりたいという児童は数人だけでした。みんなサッカーが好きと思い込んでいたこともあって、実際に全く興味のない子もたくさんいるんだと気づいたら他競技の夢先生も必要かなと思いました。

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宮澤:全国展開はもちろん良いことですね。広げていく難しさはあるでしょうが、ただ謙虚に、こういう方針ですということをわかってもらいながらやっていく。そういう活動を協会として今後も続けられたら最高だと思います。

手嶋:このプロジェクトは広げていくことが絶対条件です。一人でも多くの子どもたちに伝えたい。終着点はない。だから広げていきます。しかし、拡大するのに課題もあります。一つは授業のクオリティーをいかに保っていけるか。もう一つは危機管理。このプロジェクトはどんなに世間的に評価されても、誰か一人が問題を起こしたらそれでもう終わりなのです。だから、夢先生には自覚と責任、覚悟を持ってやってほしい。そういうリスクをスタッフもきちんと認識して運営に当たらなければならないと思っています。

 

10年、100年やっていかなければいけない

── 他競技の選手の参加、全国展開、さらにその先はどうお考えですか。

手嶋:夢先生はOB、OGを含めてサッカー選手で始めました。その次がスポーツ界。サッカー以外のスポーツ選手も参加します。将来的にはスポーツの枠を超え、幅広い分野から。ハートがあって、何かを子どもたちに伝えたいという気持ちがあれば誰でもOK。しかし、われわれサッカー協会が開発したメソッドは変えない。

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── 活動が広がっていく中で、今後に向けての抱負をお願いします。

宮澤:このプロジェクトは今後どんどん子どもたちの中に入っていくと思います。夢を持つきっかけであったり、たくさんの大人に接することであったり、そういったことがますます広まっていけば、大人が子どもをより気にするということにもなります。さらには、子どものことを考える選手ももっと増えるでしょう。そうすれば、子どもたちを取り巻く環境も良くなっていくはずです。今の子どもたちは忙しい。その中でもやはり好きなことに時間を費やせるほうが幸せだと思う。難しいことですが、役に立てれば僕もうれしいですね。

野田:授業を行って感じたのは、子どもはやっぱり元気だな、子どもなんだなと、すごくホッとした部分があります。今の世の中を見て、授業をしてみると、結局悪いのは大人かなと思いました。だから、教えたあの子どもたちがずっと元気でいてほしい。そのまま素直に成長してほしい。いい大人になる何かにつながってくれればいいなと。そんな授業がこれからもできたらいいと思っています。

── 最後に手嶋室長、夢先生に、また「夢の教室」に期待すること、今後に向けての抱負をお願いします。

手嶋:まず夢先生については、単に授業に行って戻ってくるだけではなく、それを結び付けたいという気がしています。特にOBやOGで、サッカー選手であった自信や誇りのようなものを失いかけているのであれば、それを呼び戻すきっかけになればいいなと思います。
授業は今のやり方で十分だと考えています。ただし、改善するところはしないといけません。そして、「一人でも多く」というところに焦点を置いてやりたい。そう考えると、「JFAこころのプロジェクト推進室」を果たしてサッカー協会の組織の中に置いていていいのかどうか。別の組織にすればより多くの人が参加しやすくなるのではないか。そういった組織の面からも考えていきたい。相手が子どもである以上、スタートしたからにはもうやめられないという気持ちでやっていきたい。10年、100年やっていかないといけないということです。そういう気持ちでやっていけば、10年後、20年後にはよりすばらしいものができあがっていると信じています。

── 皆さん、本日はありがとうございました。


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