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「夢の教室」開催紹介

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1学期を振り返って

[ 07.09.15 ]


文:JFA広報部/JFAこころのプロジェクトメンバー 藤ノ木 惠
JFA news 07年09月情報号掲載


JFAこころのプロジェクトが実施している「夢の教室」は、トライアル授業と2007年8月4~8日の期間に日本サッカーミュージアムで開催した夏休み特別企画「親子で語ろう 夢の教室」を含め、2007年度1学期で全53回の授業を終了した。
 同プロジェクトでは現在、1学期に実施した授業やアンケートを分析しながら、このプログラムの検証と今後の展開策について検討している。2学期からは、本プロジェクトの実施を希望するJクラブと連携してそれぞれのホームタウンで実施するほか、サッカー以外のアスリートなどにも協力を得て、スポーツ界全体の活動へと広げようとしている。

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全国展開を図る上での課題

 サッカーを教える機会が山ほどあるのに、ただサッカーの技術だけを教えていないか。サッカー界が子どもたちの“人間力”をつける手助けをできないだろうか――。川淵キャプテンのそんな思いから、議論を開始した「JFAこころのプロジェクト」は、1年に及ぶ議論と4回のトライアル授業を経て、2007年4月から本格的にスタートした。 実施した「夢の教室」は53回を数え、およそ1700人の子どもたちが夢先生とふれあい、ゲームの時間では協力して一つの目標を達成する楽しさを、トークの時間では夢先生の経験談に耳を傾け、自らの未来に想いを馳せた(※2007年9月1日時点)。
 首都圏を中心に開催していた夢の教室も、2007年7月には、同年3月に起こった能登半島地震の被災地、輪島市でも実施。これは、本プロジェクトに強い関心を持った地元・北陸放送の協力もあって実現した。また、地方展開のモデルケースとして、静岡県熱海市の小学校でも行った。 同プロジェクト推進室では、これまでに「夢の教室」を実施し児童に対し、アンケート調査を実施。このアンケートからも、また、学校関係者、教育委員会、保護者などからも高い評価を得ており、全国への拡大に向けて、より一層のプログラムの充実と運営体制の強化を図っていく。

1学期に実施した「夢の教室」を分析

 JFAこころのプロジェクトは、児童に対して授業前と後に実施したアンケート調査のうち、学校から返却された22回分、656人分(男子294人、女子325人、不明37人)を累計した。この調査・分析、担当した推進室スタッフなどの評価も加え、今後のプログラムの再確認をしている。
 児童を対象に行ったアンケート結果だが、全体としては、授業前と後では、夢を持つこと、叶えることへの意欲が増加しており、夢を叶えるために何が必要かという“気づき”を得たという結果が得られた。
 「夢について強く思うこと」という問いに対し、「自分の将来の夢を持ちたいと思う」が、授業の後で50%アップ。「夢の実現にはいろんな人の協力が必要だと思う」は56%アップしている。また、「夢を叶えるために何を心がけるか」という設問に対しては、事後の結果では全ての項目が顕著な変化を示しており、中でも「人の話をよく聞いて参考にすること」が184%、「努力すること」が186%、「挫折を乗り越える強い気持ちを持つこと」が197%もアップしている。
 夢先生別のアンケートでは、それぞれ「強く思うこと」に違いが見られる。例えば、田口禎則氏の結果では「挫折を乗り越える強い気持ちを持つこと」、「自信を持つこと」、「助け合い、人に感謝する気持ちを持つこと」、が高い数値を示している。
 田口氏が子どもたちに話したのは、Jリーガー時代、サポーターとトラブルを起こした経験談。その時、多くの人々から誹謗や中傷を受け、田口氏本人だけではなく家族までが耐え難い心の傷を負った。しかし、田口氏を信じてくれる友人がいて、外出するのにも恐れを感じるようになった家族に代わって生活の細々とした用事を肩代わりしてくれるなど、その友人がいてくれたお陰で元気を取り戻し、選手として復帰することができた。田口氏はこの経験から、友情の素晴らしさ、感謝する気持ち、挫折を乗り越える強さをということを子どもたちに説いており、それがアンケート結果に如実に表れている。
 サッカーをしていて男子からいじめられた、という小学生時代の経験を語り、サッカー選手になるという信念を持っていたことで、サッカーをやり遂げることができたと話した大竹奈美さんの結果では「失敗しても諦めないこと」、「挫折を乗り越える強い気持ちを持つこと」、「目標を持つこと」の意識が高くなっている。
 児童の男女比で見ると、男子に比べて女子のほうの変化が顕著だ。一般的にこの年代では男児より女児のほうが心身ともに発育が早い傾向にあり、また、女性は子どもを生んで育てるという本能から、男性よりも人の気持ちや状況などに共感しやすいそうだ。そんなことが影響しているのかもしれない。
 夢先生の男女比でみると、男性の先生が務めた「夢の教室」が40回、女性が9回となっているが、夢先生の性差、あるいはサッカー選手としての知名度に子どもたちが影響されることは全くなく、先生の体験談をストレートに受け止めている。子どもたちの「一言シート」を見ても、感想の中に、「壁」、「挫折」、「仲間」、「諦めない」、「くじけない」といった言葉を多く見受けられ、夢先生が強調した一言や赤裸々な体験談に敏感に反応していることがうかがえる。
 川淵キャプテンが「授業を受けた多くの子どもたちの中で、たとえ一人でも二人でも人生を変える大きなきっかけになってくれればいい」と話すように、今はおぼろげでも、いつか何かに直面した時、夢先生が語ったことを思い出してくれれば、このプロジェクトは大きな意味をなす。

全国展開するに当たって

 授業で最も重要なのが、夢先生に「ゲームの時間」、「トークの時間」のコンセプトをしっかり把握してもらうこと。言うまでもなく、「夢」をキーワードとした教室であることは十分理解されており、それぞれ夢先生は毎回、子どもたちに伝えたいことをしっかり準備し、緊張感の中に心のこもったメッセージを発してくれている。また、どの先生もポテンシャルが高く、新しい提案や意見を積極的に出している。推進室としては、プロジェクトの理念やコンセプトから逸脱しない限りは、夢先生の意思やアイデアを尊重する方針だ。
 「ゲームの時間」のメニューについては夢先生らのアイデアも参考にしたりするなど、議論を重ねながら様々なメニューを取り入れてきた。しかし、時に、夢先生と児童の距離を縮める“アイスブレイク”の意味合いが強くなり、時間の多くを体を動かす遊びに費やしたこともなくはなかった。
 一人遊びが多くなり、仲間との遊びの中で知恵を出し合ったり、喜び合ったりする機会が少なくなっている子どもたちの現状を考えると、「ゲームの時間」も単に体を動かすだけに終始せず、協調性や助け合い、ルールを守ることの重要性を感じてほしい。それは、「トークの時間」とは異なり、体にしみこむ、あるいは五感に訴えるものにもなるだろう。今後は、チームワークゲームなどメッセージ性の高いゲームを積極的に組み込み、その中で、子どもたちに考える時間を与えたり、あるいは、フェアプレー精神という部分では、イエローカードやレッドカードなどの小道具を効果的に使うなど、工夫を凝らしていくことにしている。また、「ゲームの時間」の実技メニュー紹介ビデオを新たに作成する予定だ。子どもたちに今後の夢やそのために努力することを記入してもらう「夢シート」も夢や努力の大切さの理解をより高められるよう、デザインの再検討をしている。

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 「夢の教室」の準備にあたっては、日程調整、夢先生のアレンジ、アシスタントの手配に始まり、児童への事前・事後のアンケートの実施、カリキュラム、学校側との注意事項の確認、施設や機材の確認、授業の進め方、スタッフの配置など、詳らかに詰めていかなければならない。これをきちんとさせておくことが、「夢の教室」を充実なものにし、滞りなく進行することにつながる。
 全国展開によって授業数もこれまで以上に増すが、こういった事前の準備を効率的にやっていくために、推進室では、スタッフの運営マニュアルを作成することはもちろん、これまで組織として動いていた体制を担当責任者制にして、プロデューサー、ディレクター、アシスタントディレクター等で構成するクルーを編成、1校に対し、同じスタッフが最初から最後まで関わることにしている。また、カリキュラムの主旨や注意点などを、どの夢先生にも漏れなく伝えられるよう、逐次、評価分析などを提供したり、スタッフ、夢先生、アシスタントが頻繁にミーティングを行うことで、情報の共有と一体感を醸成していく。
 川淵キャプテンが「夢先生がこの教室に慣れてしまわないこと」が重要だと訴えているが、回数を増やすことで授業の質が下がるようなことがあってはならないし、ましてや授業に支障が出たり、事故や不祥事など、決して起こってはならない。しかも、子どもたちは、夢先生だけでなく、我々スタッフの立ち居振る舞いや熱意も目ざとく見ているはずだ。この活動に携わるスタッフも緊張感と責任、自覚を持って運営にあたる一方、JFA全体が高い志と誇りを持って活動を広めていくことが、社会に貢献し、スポーツ全体の価値を高めることにもなる。

 

夏休み特別企画「親子で語ろう“夢の教室”」を開催

親子で夢を語る

 JFAこころのプロジェクトは2007年8月4日から9日までを“夏休みユメセンウィーク”と称し、一般公募で募った児童と保護者を対象に、日本サッカーミュージアムのバーチャルスタジアムで「夢の教室」を開催した。
 「夢の教室」は4日から8日の期間に8回行われ、元日本代表でJFAアンバサダーの小倉隆史氏、永島昭浩氏、前園真聖氏、小島伸幸氏、本田泰人氏、澤登正朗氏、元なでしこジャパンの野田朱美さん、大竹奈美さん(順不同)が夢先生を務めた。また、元Jリーガーの井手口純氏と元なでしこジャパンの東明有美さんがアシスタントとして、授業を盛り上げた。
 今回の「夢の教室」は小学校での授業と異なり、参加した児童は、夏休みを利用して全国各地から訪れた子どもたち。最初はそれぞれぎこちない雰囲気だったが、夢先生やアシスタント先生の導きもあってすぐに打ち解け、グループで競争するゲームでは、みんなであれこれ相談をしながら、どうやったら上手く、早く出来るかなどを話し合っていた。その中で、リーダーシップを執る子どもや、内気な子をフォローする児童など、自然とグループの中で仲間意識や和が芽生えていくのが興味深かった。
 「トークの時間」は、保護者も子どもと机を並べ、夢先生の授業を受けた。今回は一般募集とあって、サッカーをしている子どもが多く、また、出席したお父さんの中には審判員として活動している人や、趣味でフットサルを楽しんでいるといった人も何人かおり、サッカー選手としてさまざまな困難を乗り越えてきた夢先生の話を、子どもたちと同様に真剣な眼差しで聞いていた。

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 夢先生の体験談を聞いたあと、親子それぞれが自らの夢を「夢シート」に記入、何組かの親子に発表してもらった。「3級審判員を取得して、来年は中学生になる子どもと同年代のチームが出場する試合でレフェリーを務めたい」、「建築士として、自分の家を設計したい。そのために一生懸命働いて貯金をする」、「子育てを離れ、今度は自分の趣味である乗馬に励みたい。そのために体を鍛える」など、保護者も今後の夢や目標を発表した。夢先生から「今までお母さんの夢を聞いたことある?」と質問されると、ほとんどの児童は「知らなかった」と答え、保護者からも「自分のこれからを考える良いきっかけになった」という感想が多く寄せられた。
 川淵三郎キャプテンも「今回の収穫は、親が子どもを前にして夢を語ったこと。家に帰ってからも夢について会話が弾むと思う。家族のコミュニケーションが広がると思う」と、顔をほころばせていた。 

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夢先生の熱気に包まれたユメセンサミット

 夏休み特別企画最終日の9日には「ユメセンサミット」と題し、「夢先生」として名を連ねる元日本代表やJリーガー、なでしこリーグの元選手ら総勢20人が集まり、夢先生を務めた率直な感想や今後の課題、これから夢の授業に臨む夢先生からは、子どもたちへの熱い想いが語られた。
 最初に川淵キャプテンが挨拶し、1学期だけで53回という授業を実施できた喜びを語った。また、これまで参観した授業を振り返り、「どの授業も夢先生の想いに溢れていた。“伝えたい”という先生のひたむきな気持ちが伝わり、いつも見ていて涙が出る」と、言葉を詰まらせた。
 第1回と夏休み企画の2回、夢先生を経験した前園氏は、「一回目の授業をするにあたって、トライアル授業をした北澤(豪)さんや城(彰二)からアドバイスを受けた。自分は話すことが上手くないが、熱い気持ちが伝わればいいかと・・・。全ての子どもが理解してくれたなんて大それたことは思っていないが、少しは伝わったと思う」と感想を話した。羽中田昌氏は、「1時間で何が伝えられるか不安だった。いざ授業を始めると、子どもたちが、この先生から何かを聞きだそうとしている感じが見て取れ、大きな可能性があると感じ、嬉しかった。(自分は堅いタイプなので)ユーモアも必要だと思った。伝えたいことは、一つか二つに絞って話すのがいいと思う」と、これから夢先生を務める仲間たちにアドバイスを送った。
 「現役を辞めてから何をしたいか考える機会などなかったのだが、今回、それを考えるいいきっかけになった」と話したのは、元なでしこジャパンの川上直子さん。前田治氏もこのプロジェクトに関わったことで、自分自身を考える契機になったと話し、「がんばらなきゃ」と、気持ちを新たにしたそうだ。
 全員の夢先生の話が終わった後は、本プロジェクトのアドバイザリーボードのメンバーを務める日比野克彦氏(アーティスト)が司会を務め、出席者とのセッションを行った。
 セッションは、日比野氏がそれぞれ夢先生に質問を投げかける形で進行。授業を行ったことがある夢先生に対して、どんな意気込みで臨んだかを聞くと、「自分の考えを押し付けてはいけないと思いながらやった」(中田一三氏)、「自分が小5のときはどうだったか、同じ世代の話をするのがいいのかどうか、子どもたちの様子を見ながら、食いつきのいいところを深く話した」(水内猛氏)といった体験談が聞かれた。
 2学期以降、このプロジェクトに臨む夢先生の一人、梅山修氏(元アルビレックス新潟)は、「地元で夢について話したことがある。田舎では子どもも大人も、東京じゃないと夢が実現できないと思っているようで、“~になりたいけど”と、必ずけどがつく。“~になりたい”と(自信を持って)言ってもらえるようにしたい」と、物静かな口調の中に強い意気込みが垣間見えた。
 サミットに出席した川淵キャプテンは、「大勢が集まる会議は往々にしてみんな画一的な発言になりがちだが、一人ひとりが率直な感想やユニークな話をしていた。こんな会は珍しい。自分にプラスになったこと、自信などが、その発言に表れているのかもしれない」と、感嘆しきりだった。
 最後に手嶋推進室長が挨拶し、2学期からは首都圏以外のJリーグのホームタウンにも順次、拡大していく一方で、他競技の選手にも協力をお願いしていることを報告。「今後は皆さんの母校でもやってほしい。先輩が夢先生となって話すことで、より子どもたちが身近に感じると思う」と、集まった夢先生らに呼びかけた。


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